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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)5100号・昭39年(ワ)5001号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判決理由】(本件特許発明の要部)

二 当事者間に争いのない前記特許請求の範囲の記載に、成立に争いのない甲第二号証(本件特許公報)、とくに「発明の詳細なる説明」欄の記載を参酌して考察すると、本件特許発明は、あられ菓子の製造方法に関するものであり、

(1) 常法により搗き上げた餅生地を、規定の容器に充填して、約三日間3ないし5°Fの冷気中に冷蔵する第一工程と、

(2) 該冷凍餅生地を取り出して、これを各種形状の小片に截断し、かつ、一旦乾燥後、これに短時間赤外線を照射したのち、焼き上げる第二工程と、

(3) この焼き上げたものに、これを攪拌しつつ、予め短時間煮沸したサラダ油を噴き付けつつ、食塩及び調味料を、振りかけたのち、再び乾燥せしめる第三工程との結合を要件とするものであることが認められる。

被告らは、前掲特許請求の範囲の記載中「3°乃至5°F」とあるのは、「3°乃至5℃」の誤記である旨主張するが、前掲甲第二号証(本件特許公報)の「特許請求の範囲」の項はもち論、「発明の詳細なる説明」の項の記載からも、そのような誤記であることを認めうべき何らの手がかりを見出すことはできない。(むしろ、右「発明の詳細なる説明」の項において、一再ならず「3°乃至5°Fの冷気」といい、あるいは、「冷蔵」のほかに「冷凍」とまで記載されている事実を一切無視し、卒然として、これを誤記であるとしてしまうことは、はなはだ、当をえないものというべきであろう。もし、実際に考案された工程において「3乃至5℃」であるものを、出願に当り、その温度を「3乃至5°F」と誤信して前記のような記載のある明細書を作成出願したというのなら、それは、もはや、単なる誤記の問題ではないことは、多くの説明を要しないところであろう)

(原告らのあられ菓子製造方法)

三当裁判所の検証(昭和三十九年七月三十一日及び同年九月四日施行)の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告堀部食品のあられ菓子製造方法は、別紙第一目録一から四記載の各方法であり(同原告が、同目録一の(3)の工程を実施していることについては、当事者間に争いがない。)、原告富士屋のあられ菓子製造方法は、別紙第二目録一から四記載の各方法であることを、それぞれ認定しうべく、他にこれを左右するに足る資料はない。(原告堀部食品のあられ菓子製造方法は、本件特許発明の技術的範囲に属するか)

四 同原告の実施している前掲三のあられ菓子製造方法のうち、別紙第一目録一記載の方法と本件特許発明のあられ菓子製造方法とを比較するに、

その第一工程において、本件特許発明は、常法により搗き上げた餅生地を規定の容器に充填して、約三日間、3ないし5°Fの冷気中に冷蔵するものであるが、同原告の方法は、常法により搗き上げた餅生地を、あられの型に応じて所定の容器に充填して、約七十時間3ないし8℃の冷蔵庫中に冷蔵するものであり、餅生地を搗き上げる手段、冷蔵時間及び冷蔵手段については、両者は、ほとんど同一であるということができるが、前者の冷蔵温度3ないし5°FをCに換算すると、約−16.1ないし−15℃になり、後者の冷蔵温度3ないし8℃とは大きな隔たりがあるから、両者は、第一工程において、すでに差異があるといわざるをえない。

したがつて、同原告の別紙第一目録一のあられ菓子製造方法は、本件特許発明の要部である前掲二の(1)の要件を欠くものというべく、このように、同原告の右方法が、本件特許発明の要部である工程の一つを欠く以上、仮に他の要件をすべて具備しているとしても、前掲各要件の結合によつて構成される本件特許発明の技術的範囲に属するものということはできない。

次に、同原告の同目録二から四記載のあられ菓子製造方法と本件特許発明のあられ菓子製造方法とを比較すると、同原告の右製造方法は、いずれも、第二工程において使用する焼釜を異にするほかは、同目録一記載の製造方法と同一であること前認定のとおりであり、したがつて、右と同様、本件特許発明の要部である前掲二の(1)の要件を欠くものであるから、これまた、本件特許発明の技術的範囲に属するものということはできない。

したがつて、被告らが、本件特許権に基づき、原告堀部食品が別紙第一目録一から四記載の各方法により、あられ菓子を製造し、又は、右各方法により製造したあられ菓子を販売し、もしくは販売のため展示する行為を、差し止めるべき請求権を有しないことの確認を求める同原告の本訴請求は、理由があるものということができる。

(原告富士屋のあられ菓子製造方法は、本件特許発明の技術的範囲に属するか)

五 まず、同原告の実施している別紙第二目録一記載のあられ菓子製造方法と、本件特許発明のあられ菓子製造方法とを比較するに、前掲第一工程において、本件特許発明は、常法により搗き上げた餅生地を規定の容器に充填して、約三日間、3ないし5°Fの冷気中に冷蔵するのに対し、同原告の方法は、常法により搗き上げた餅生地を、製品の形に応じて、鉄板製丸型樋その他所定の形状に充填し、約三日間、4℃前後の冷蔵庫中に冷蔵するものであり、餅生地を搗き上げる手段、冷蔵時間及び冷蔵手段については、両者は、ほとんど同一であるということができるが、前掲四の場合と同様、冷蔵温度に著しい差異がある。

したがつて、同原告の右製造方法は、本件特許発明の要部である前掲二の(1)要件を欠くものといわざるをえず、このように、同原告の右方法が、本件特許発明の要部である工程の一つを欠く以上、仮に他の要件をすべて具備していたとしても、前掲各要件の結合によつて構成される本件特許発明の技術的範囲に属するものということはできない。

次に、同原告の同目録二から四記載のあられ菓子製造方法はいずれも、第二工程において使用する焼釜を異にするほかは、同目録一記載の製造方法と同一であること前認定のとおりであり、したがつて、右と同様、本件特許発明の要部である前掲二の(1)の要件を欠くものであり、これまた、本件特許発明の技術的範囲に属するものということはできない。

したがつて、被告らが、本件特許権に基づき、原告富士屋が、別紙第二目録一から四記載の各方法によりあられ菓子を製造し、又は右各方法により製造したあられ菓子を販売し、若しくは販売のため展示する行為を、差し止めるべき請求権を有しないことの確認を求める同原告の本訴請求は理由があるものということができる。(三宅正雄 太田夏生 佐久間重吉)

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